水土里情報課の業務は大きく2つに分けられます。 1つ目は当会内のOAや積算システムの企画、運用及び管理です。OAは高機能であれば良いというものではありません。不要な機器・機能は予算的にもったいないだけでなく、セキュリティリスクを増やしてしまいます。そのため、必要な機能を持続可能な形で維持できるよう心がけています。
2つ目は県や会員からの受託業務です。GIS(地理情報システム)の構築・運用や、農業農村分野の基盤地図「水土里情報」を管理・更新し、当会の会員に向けて利活用の促進を行っています。「水土里情報」とは、行政の各課でバラバラに管理していた地図データをGIS上で重ね合わせて表示できるよう整理統合し、農業農村分野の職員が使えるように整備したデータおよびシステムで、当課の主な業務の1つです。会員それぞれのOA環境で過不足なく運用できるような調整や提案が大切です。
同じく受託業務として、平成30年の西日本豪雨を受けて増加したのが、ため池の氾濫解析やハザードマップの作成です。当会では平成25年度のため池一斉点検の実施により培った氾濫解析のノウハウと水土里情報を用いて、毎年約300か所のハザードマップを作成しています。なお、平成30年度の西日本豪雨災害時には、臨時で災害対策室が設置されました。災害復旧のためには国の査定を受けるための設計書を90日以内に作成する必要があります。この時には水土里情報課の私を含め、各課からの人員の結集に加え、全国の水土里ネット職員の方々が応援に来てくれました。
OAやGIS関連の仕事は、会員や他課の職員がシステムを使って思う存分仕事ができるように、後方からサポートする仕事です。表舞台に出ることは少ないですが、大きなやりがいのある仕事です。 他課の仕事と同様に、水土里情報課でも「前例どおり」「他の案件と同じ」は通用しません。発注者の意向を正しく汲み取った上で、今後の見通しも踏まえた提案を行います。案件ごとに最適な回答は異なりますが、真剣に考えるほど「頼んで良かった」「次回もよろしく」と言っていただけます。このように言っていただけるような関係を継続できるよう心がけています。
また、西日本豪雨後に増加したため池業務では、私たちが作成したハザードマップを基にして、地域の方々がため池の今後の対策を検討します。現在では管理されていないため池や使用されていないため池もあり、決壊時には地域住民の命に関わることから、廃止を望む声もあります。一方で少人数でも農業用に利用されている場合があり、これは農業を応援する関係者にとっては悩ましい事態です。命に関わることなので、まずはなるべく早く地域の方々が話し合える場を提供することが私たちの役割だと考えています。農業への貢献を第一に考えた上で、まさにその地域を守る大切な業務だと認識しています。
公務員でも民間でもない独自のポジションで、農業・農村に貢献できることが魅力の1つです。国や県の会議に参加したり、市町村や土地改良区からの要望を県や国に伝えることもあります。また、土地改良事業団体連合会は全国組織としての「全土連」、および各都道府県にあり、それぞれが独立組織ですが、必要に応じて連携を図りながら業務を進めています。水土里情報システムやため池氾濫解析にあたっては情報共有など地域を超えて連携したり、農研機構などの研究機関や国と直接やりとりできたりするのも面白さの1つですね。
さらに言えば、専門的な力が付くことも大きな魅力です。技術者の集まりのため、お互いを尊重し合い、お互いの専門的な力を業務に活かす風土があります。打ち合わせの中では「何でそう思ったの?」と相手の考えを知ろうとする言葉がよく使われます。また、スケジュールが行き詰まったり、自分に知識や技術が足りないと感じる場面があっても、それを仲間に正しく伝えることで協力しながら業務を進めることができるなど、腰を据えてじっくり実力を養える環境だと思います。技術士や土地改良換地士、農業土木技術管理士、測量士、土木施工管理技士など難易度の高い資格も、職場として取得費用の一部を助成する制度があります。
若いころに先輩に言われたことなのですが、「興味を持つ」ということです。私の担当分野だと地図やデータですが、恐らく水路や樋門、ため池などにおいても同様で、「それがなぜ必要なのか」「どういう仕組みなのか」と興味を持つことで、どのように運用するのかなど目的意識や説得力が生まれ、結果として技術力も応用力も向上するのではないでしょうか。今でも「興味を持つ」ということが、仕事において最初にすべきことだろうと思っています。